研究概要 |
われわれはCa2+透過性AMPA受容体とcalbindinD28K等のCa2+結合蛋白が共発現する傾向をみいだし(Kondo et al.,1997,2000)、これまでこの共存の意義を追求してきた。培養系において、AMPA受容体刺激で特異的にcalbindinD28Kが樹状突起や細胞体から核や軸索に局在をかえること、核への移行がCREBのリン酸化をひきおこすこと、さらにcalbindinD28Kの細胞質存在がCa2+透過型AMRA受容体の細胞表面発現を促進することを見い出している。このCa2+透過型AMPA受容体とcalbindinD28Kが共存することで、Ca2+透過型AMPA受容体の膜発現が促進され、その結果AMPA刺激依存的に流入したCa2+によってcalbindinD28kが核に移行し、CREBのリン酸化を促進している系、を"Ca2+透過性AMPA受容体-calbindinD28k情報伝達系"として提唱している。 (1)AMPA受容体の膜発現についてはさらにビオチン免疫沈降法をもちいて検討したところ、カルシウム非透過型AMPA受容体よりもカルシウム透過型AMPA受容体において、CalbindinD28kの共存により膜発現が増強することがあきらかとなった。 (2)細胞内カルシウムキレーターであるBAPTA-AMを添加することにより、Ca2+透過型AMPA受容体の膜表面発現が上昇することを見出した。従って、カルビンジンによる、Ca2+透過型AMPA受容体の膜表面発現促進はカルビンジンのカルシウムキレート作用によるが示唆される。 (3)NMDA受容体の膜発現についてもカルビンジンの影響を検討した。NR1とNR2Bをアデノウイルスベクターを用いて培養細胞に導入したところ、カルミンジンの共存によってNR2Bの膜発現が増強した。これはカルビンジンの効果が、Ca2+透過型AMPA受容体に限らないことを示している (4)光り刺激によって視覚領においてカルビンジンの核移行とCREBのリン酸化が観察された。このことはin vivoにおいても"Ca2+透過性AMPA受容体-calbindinD28k情報伝達系"が機能していることを示唆している。
|