アルツハイマー病の主病変を構成するAβ/APPとtauの相互作用がアルツハイマー病の病態において重要な役割を果たすことが示唆されている。我々は、APPのcytosol domainとcytosol proteinであるtauが相互作用を示し、それによってtauのリン酸化およびAPPのcytosol domainのThr668のリン酸化が調節されるとの仮説を実証するための研究を行ってきた。本研究では、APPのcytosol domainを有するC99とtauを対象にし、tauのリン酸化に及ぼすC99の影響を調べた。C99とtauをCOS7細胞で共発現させると、tauを単独発現させた場合に比べて、Thr181とThr231部位のリン酸化が抑制された。 脱リン酸化酵素阻害実験から、この脱リン酸化には、PPIが関与することが分かった。TauとC99が直接結合するかどうかを免疫沈降法にて調べたが、結合が見られなかったので、両者の結合に際しては、第3の因子の存在が想定された。そこで、tauのリン酸化Thr231に結合し、tauの脱リン酸化に関与するとされるPin1に注目した。まず、Pin1はAPPのリン酸化Thr668に結合した。次いで、Pin1 1^<-/->MEF細胞を用いて、C99とtauを共発現した。Tauを単独発現させると、Pin1の有無に関わらず、tauのリン酸化は一定であった。TauとC99を共発現した場合、Pin1の存在によって、tauの脱リン酸化が亢進し、Pin1が存在しない時には、tauの脱リン酸化はみられなかっただけでなく、リン酸化の亢進がみられた。つまり、Pin1はC99と共同して、tauの脱リン酸化に関与し、Pin1が欠乏すると、tauのリン酸化が亢進するのである。このことから、アルツハイマー病脳において、tauの異常リン酸化過程に、C99/Pin1の関与が推測された。
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