MAP kinase familyは外界からの刺激による細胞のアポトーシスや分化を仲介しており、Erk、p38、JNKの3群に分類される。私達は、活性型JNKがニワトリ胚脊髄において伸長中の軸索に発現するが、発生の進行に伴って核に移行することから、軸索伸長への関与の可能性を示した。また、これ以外にも様々な報告がなされており、神経発生におけるMAP kinase familyの役割が明らかにされつつある。そこで、本研究では活性型Erkとp38のニワトリ胚脊髄および脊髄神経節における発現を免疫組織化学法を用いて調べた。Erk1/2は、孵卵3日(E3)の脊髄腹側部の脳室層の細胞体と突起で弱い発現が見られた。その後、脳室層の発現は強まり、E7ではそれに加えて後角の小型のニューロンに発現が見られるようになった。E8になると脳室層、後角に加え、前角の細胞で強い陽性反応が見られるようになった。この後、これらの発現は次第に弱くなり、それに対し、免疫陽性のグリア様の細胞が白質に広く分布するようになった。脊髄神経節では、E9以後、背外側部の小型の細胞に発現が見られた。一方、活性型p38はE6で底板に限局して発現が開始し、以降同様の発現を示した。以上のように限局した領域にそれぞれの時間的パターンで発現が見られることから、Erk1/2やp38が脊髄および脊髄神経節の発生に関与していることが示唆された。
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