遺伝的に特定の運動神経枝が欠損することが原因で、支配筋に神経原性の筋萎縮がおこる変異マウスを用い、その原因遺伝子を同定し、機能解析をすることによって、運動神経軸索ガイダンスの仕組みを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 これまでに行った連鎖解析によって特定した約2Mbpに渡る原因遺伝子座の候補領域内には、データベース検索により約20個の転写産物(transcripts)の存在が予想された。その中でも転写産物である可能性の高いものに関して、正常マウス胎児から抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行ったところ、13個の遺伝子については予想される大きさのDNA断片が増幅された。また、転写産物である可能性が高い残りの遺伝子に関しては、他のマウス組織等からRT-PCRによりDNA断片を増幅した。それら増幅されたDNA断片をクローン化し、in situ hybridizationに用いるプローブを作成した。正常マウス胎児の組織切片上でのin situ hybridizationを行い、その結果少しでも発現が観察されたものについては、優先的に以下の遺伝子構造解析を行った。 上記の予想されるエクソンについて、変異マウスと2系統の正常マウス(C57BL/6、129/sv)の、エクソンおよびその周辺の塩基配列を決定し、比較した。その結果、エクソン内での1塩基置換、1〜数塩基の欠失、イントロン内での1塩基置換、1〜数塩基の欠失あるいは挿入が複数カ所確認された。 今後、候補領域内に予想される全てのエクソンとその周辺の塩基配列を決定し、比較すると共に、それらが多型であるか遺伝子変異であるかについて検討を行う。
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