遺伝的に特定の運動神経枝が欠損することが原因で、支配筋に神経原性の筋萎縮がおこる変異マウスを用い、その原因遺伝子を同定し、機能解析をすることによって、運動神経軸索ガイダンスの仕組みを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 これまでに行った連鎖解析によって特定した約2Mbpに渡る原因遺伝子座の候補領域内には、データベース検索により約20個の転写産物(transcripts)の存在が予想された。本年度は以下の3つの方法により研究を進めた。まず前年度に引き続き、変異マウスと2系統の正常マウス(C57BL/6、129/sv)を用い、候補領域内に予想されるエクソンとその周辺の塩基配列の比較を行った。これまでに比較したエクソン合計197について、エクソン内で1塩基置換が57か所、1〜数塩基の欠失が3か所、イントロン内で1塩基置換が155カ所、1〜数塩基の欠失あるいは挿入が16か所確認された。次に、平行して、マイクロサテライトマーカーの種類を大幅に増やし、さらに多検体を用いた連鎖解析を行った。その結果、候補領域がさらに狭まり、およそ1.2Mbpとなった。 さらに、表現型の詳細な解析を行うため、変異マウスにおいても運動神経特異的にEGFPを発現するトランスジェニックマウスを作成し、7ラインを得た。EGFPの発現パターンはどのラインでも一致しており、トランスジーンの挿入場所による影響はほとんどないと考えられた。今後、エクソン及びその周辺に関して塩基配列の比較を行うと共に、表現型並びに遺伝子発現の詳細について比較検討し、原因候補遺伝子を明らかにする予定である。
|