本年度は、ビオチン化デキストランアミン(BDA)による順行性標識法とチロシン水酸化酵素(TH)に対する免疫組織化学を併用して、扁桃体中心核から中脳ドーパミンニューロンへの連絡様式を、ラットを用いて光学顕微鏡的ならびに電子顕微鏡的に解析した。 扁桃体中心核にBDAを電気泳動的に注入し、BDA標識線維をアビジン-ビオチン複合体で検出後、TH陽性ニューロンを抗TH抗体による免疫染色によって可視化した。その結果、BDAで標識された扁桃体線維は赤核後野(A8)の吻尾にわたって密な終末野を形成しながら走行していた。標識線維の一部は黒質緻密部(A9)の外側部にも分布していたが、腹側被蓋野(A10)にはほとんど認められなかった。赤核後野(A8)では、とくにその外側部においてBDA標識線維とTH陽性ニューロンの分布がよく一致しており、この領域を電子顕微鏡下で観察すると、TH陽性ニューロンの細胞体や樹状突起と対称性のシナプスを構築するBDA標識線維終末が多数認められた。 なお、本研究に関連して、下位脳幹に投射する赤核後野(A8)のニューロンはTH陰性であることを、Fluoro-goldによる逆行性標識法とTHに対する免疫組織化学を併用して明らかにした。次年度は、前頭葉内側面皮質から中脳ドーパミンニューロンへの連絡様式について、さらに解析を進める予定である。
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