前脳領域にドーパミン(DA)作動性線維を送る中脳DAニューロンに辺縁系からの出力がどのように作用しているのかを知る目的で、前年度は扁桃体からの出力線維が中脳DAニューロン、とくに赤核後野(A8領域)のDAニューロンとシナプスを形成することを明らかにした。本年度は前頭葉内側面に位置する辺縁下皮質と中脳DAニューロンとの接合様式について解析した。 ラットの辺縁下皮質に順行性標識物質であるビオチン化デキストランアミン(BDA)を電気泳動的に注入し、1週間後に潅流固定した。脳切片を作成して、BDA標識終末をアビジン-ビオチン複合体で検出後、チロシン水酸化酵素(TH)陽性ニューロン(DAニューロン)を免疫組織学的に検出した。その結果、中脳領域では、多くのBDA標識線維終末が黒質緻密部(A9領域)の最内側部から腹側被蓋野(A10領域)にかけて認められた。また、背外側被蓋領域から中心灰白質の腹外側部にかけてもBDA標識線維終末が分布していた。一方、TH陽性ニューロンは赤核後野、黒質緻密部および腹側被蓋野に多数存在していた。したがって、黒質緻密部の最内側部から腹側被蓋野にかけての領域において、BDA標識線維終末とTH陽性ニューロンは混在し、TH陽性ニューロンに近接して存在するBDA標識線維終末が数多く認められた。この領域を電顕下で観察すると、BDA標識線維終末は球形のシナプス小胞を有し、TH陽性ニューロンの樹状突起に非対称性のシナプスを形成していた。 以上の結果から、中脳DAニューロン(とくに、腹側被蓋野のDAニューロン)への辺縁下皮質からの興奮性入力の存在が示唆された。
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