本研究はラット嗅球神経回路における投射ニューロンの樹状突起のシナプス結合の解明を目的に、嗅球各層別に解析を行った。平成16年度の研究結果を以下に列記する。 1.糸球体層:糸球体内樹状突起網のシナプス 糸球体へ特異的に収束している嗅受容細胞の終末は糸球体内に三次元的に塊状に存在し、これに対応する形で、投射ニューロンの樹状突起が糸球体内に分布している。投射ニューロンのうちMitral cellは糸球体内に三次元的に限局的に分布しているが、Tufted cellはより広範に分布しているため嗅受容細胞とMitral cellの存在様式は糸球体内では小分画状である。これに対して各種介在ニューロンがシナプス結合を形成するが、tyrosine hydroxylase陽性ニューロンが複数の小分画間に連続性シナプス結合(非対称性シナプスを受け別の樹状突起に対称性シナプスを形成)を形成し、一方calbindin及びcalretinin陽性ニューロンは同一の小分画に分布し同一の投射ニューロンに相反性シナプス結合(非対称性シナプスを受け対称性シナプスを形成)することが明らかとなった。 2.外網状層:一次樹状突起軸と二次樹状突起群のシナプス 二次樹状突起群にシナプスする顆粒細胞とparvalbumin(PV)陽性ニューロンのうち、顆粒細胞は外網状層全層で投射ニューロンと相反性シナプスを形成し、PVニューロンは細胞体により近い部位で連続性シナプス(非対称性シナプスを受け別の樹状突起に対称性シナプス)を形成していた。 3.僧帽細胞層〜内網状層:軸索起始節を含む細胞体のシナプス 現時点までの解析から、非対称性シナプスを受け別の投射ニューロンに対称性シナプスを形成する連続性シナプスをPVニューロンが形成している。 相反性シナプスはrecurrent modulation、連続性シナプスはlateral inhibitionという異なる機能的効果が推測され、これらのシナプスの分布と定量を更に進め、嗅球神経回路におけるこれらのシナプス結合とニューロン構成の機能的意義を検討している。
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