本研究期間における成果を以下に要約する。 1.糸球体層 嗅受容細胞の終末は糸球体内に三次元的に塊状に存在し、これに対応する形で投射ニューロン樹状突起が糸球体内に小分画状に分布する。投射ニューロンのうちMitral cell樹状突起は糸球体内に三次元的に限局的に分布しているが、Tufted cellはより広範的である。これらに対し各種介在ニューロンがシナプス結合するが、tyrosine hydroxylase陽性ニューロンが複数の小分画間に連続性シナプス結合(非対称性シナプスを受け別の小分画の樹状突起に対称性シナプスを形成)を形成し、一方calbindin及びcalretinin陽性ニューロンは同一の小分画に分布し同一の投射ニューロンに非対称性シナプスを受け対称性シナプスを形成する(相反性シナプス)。 2.外網状層 二次樹状突起群にシナプスする顆粒細胞は外網状層全層で投射ニューロンと相反性シナプスを形成し、parvalbumin(PV)ニューロンは細胞体により近位で連続性シナプス(非対称性シナプスを受け別の樹状突起に対称性シナプス)を形成する。 3.僧帽細胞層〜内網状層 PVニューロンはMitral cellから非対称性シナプスを受け別のMitral cellに対称性シナプスを形成している(連続性シナプス)。また顆粒細胞とMitral cellの相反性シナプスも観察された。 相反性シナプスは回帰抑制、連続性シナプスは側方抑制という異なる機能的効果が推測され、形成するニューロンの化学構成とシナプス分布と定量を更に進め、嗅球神経回路におけるシナプス結合とニューロン構成を解析している。 4.この他に本研究期間内で、嗅球のステロイド合成能を明らかにし、また神経回路調整の可能性として脂質代謝異常、時計遺伝子、オピオイド、自律神経性調節などの予備的研究を行った。
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