1.マカクザル中枢神経系における局在解析 われわれはin situ hybridization法と免疫組織化学法によって、高親和性コリントランスポーター(CHT)のmRNAとタンパクの局在を解析し、脳神経運動核[体性運動ニューロンと副交感神経節前ニューロン]、背外側被蓋核、脚橋被蓋核、結合腕傍核、淡蒼球、被殻、尾状核、中隔側坐核、基底核(Meynert)、対角帯核(Broca)、内側中隔核、嗅結節にCHTを発現する細胞体を確認した。副交感神経節前ニューロンは他に比べ、mRNAの発現量も細胞質におけるタンパクの局在量も、有意に少なかofIた。これらの所見は平成16年8月の第16回国際解剖学会と10月の第34回北米神経科学学会において発表した。 また、脊髄のα運動ニューロンのうち、支配筋の種類によって細胞体のCHT分布量が異なることを見いだした。固有背筋支配の細胞を中心とする内側群は高濃度のCHTを持つものが多いのに対して、体肢筋支配の細胞を中心とする外側群はCHTの細胞体分布量の少ないものが多いという所見を得た。 2.シナプスにおけるCHTタンパク局在の超微形態的解析 愛媛大学医学部解剖学第一講座の松田正司教授と共同で、マカクザル神経筋接合部における免疫電顕による解析をpost-embedding法を用いて行った。CHT免疫反応性を示す金粒子はシナプス小胞の集積する領域に多く見られ、一部は終末周囲の細胞膜に存在した。CHTは膜結合タンパクであるので、この所見からCHTがシナプス前膜ではなく小胞膜に主に局在し、アセチルコリン放出時にシナプス前膜に移行するというラットにおける説を、霊長類において確認することができた。 以上の結果は現在論文として投稿準備中である。
|