大脳基底核は、大脳皮質からの諸情報を統合し、視床へと情報を送ることで、運動制御に関わっている。この大脳皮質-大脳基底核-視床系に対し、大脳皮質を経由せず、直接脳幹の諸核を経由して、運動制御に関わる経路が存在する。このうち黒質網様部から入力をうける上丘を介する系について形態学的な解析を行った。Ketamin-xylazine混合麻酔下のラットの上丘深層に、biotinylated dextran amine (BDA)をごく微量に注入し、生存5日後に、視床から脳幹にかけて、50μmの凍結連続切片を作成した。標識を可視化した後、中脳や間脳において、順行性標識された上丘ニューロンの軸索終末の分布を解析した。上丘の注入部位は内側、外側、尾側、吻側と様々な部位に行ったが、部位特位的な傾向は存在しなかった。終末の分布は、中脳では、中脳網様体の腹側部と、視蓋前域核群にうち後交連核や前視蓋前域核に多く分布していた。また黒質網様部にもわずかに終末が認められた。間脳では、背側視床と腹側視床に大きく分かれた分布をしていた。このうち背側視床では、主として視床髄板内核群(正中中心核、束傍核、外側中心核)、背内側核などに多くの終末があり、その他、後内側腹側核、後外側腹側核、室傍核などに終末が認められた。腹側視床では、不確帯やForel野に多量の終末が分布していた。以上の結果から、上丘深層のニューロンは、下行性に投射して外眼筋や頭頚部筋の運動ニューロンを支配し、眼球運動・頚部の運動の調節に関わると同時に、上行性に視床の髄板内核群、特に束傍核に投射があることが明らかになった。この束傍核は線条体に投射することはよく知られているので、従って基底核からの出力が、新たに上丘-視床を介して、基底核内にフィードバックされうる可能性が示唆された。
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