研究概要 |
本研究では、従来の二次元超音波断層法を用いた、霊長類の脳のトレーサー注入を継続してきた。本年度は、そういった神経解剖学的所見について検討してたが、また、別途に方法論的な大きな進展があった。それは、三次元超音波断層法を新たに生きた霊長類脳の観察に応用し、従来の方法より、きわめて高精度のトレーサー注入を容易に得る事ができるようになったことである。(Tokuno and Chiken, Neurosci.Res.2004) 本方法においては、専用の三次元超音波断層装置を用いることにより、数十秒のスキャンで、100から200断面の二次元超音波断層像を収集し、デジタルデータとしてコンピュータによる画像処理を適用することができる。脳のさまざまな断面の像を自由に観察することができると同時に、表面レンダリング法により、脳表からの観察像を再構築することも容易に可能である。 今回われわれは、ニホンザルにおいて、脳固定、頭蓋骨部分除去の前処置後に硬膜上からその下の脳の観察を試みた。脳の断面の観察を行うとともに、金属電極や、注入用ガラスマイクロピペットの刺入時の像の観察を行った。脳の深部の構造と、金属電極・注入用ガラスマイクロピペットの両者の像を同時観察することが可能で、刺入のミスがあった場合、容易に発見可能であった。大脳皮質運動野や補足運動野でも、脳表面レンダリング像上で電極の同定が可能であり、皮質の脳溝・脳回パターンとの対比ができた。 本方法をもちいて、脳深部の構造で大脳基底核出力核のターゲットである上丘にトレーサーを注入し、組織学的検索を行うことにより、三次元超音波断層法が有用であることがさらに確認できた。
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