研究課題
ユビキチン・プロテアソーム系は細胞内タンパク質分解機構の中核をなし、その障害は種々の神経変性疾患における異常タンパク質凝集に関わる。昨年度の実績として、加齢性大脳萎縮の自然発症を特徴とするSAMP10マウス(P10)では、ニューロンにユビキチン化封入体が出現することを報告した。今回は封入体分布のより詳細な解析に加えて、脳内プロテアソーム活性の加齢変化を生化学的に検討し、脳萎縮を発症しないSAMR1マウス(R1)やC57BLマウス(B6)と比較した。各月齢のP10・R1・B6から得た脳切片でユビキチン免疫染色を行い、画像解析装置を用いて封入体の精確な分布図を作製し、また、嗅内野ニューロンが大型封入体を有する割合を測定した。一方、各月齢のP10・R1から調整した脳組織ホモジネートを、蛍光物質AMCにアミノ酸を付加したプロテアソーム特異的人工基質とともにインキュベートし、組織のプロテアソーム活性によって遊離するAMC量を蛍光分光光度計で測定した。その結果、封入体の分布は、側坐核・扁桃体・視床下部・腹側海馬・内嗅領皮質・前帯状皮質などに密であった。嗅内野ニューロンの封入体含有率はR1とB6では加齢とともに緩やかに増加したのに対し、P10では急速に増加し、17ヵ月齢で34%に達した。3・7・12・17ヵ月齢における大脳辺縁系関連組織の遊離AMC量は、R1では150・134・126・88(pmol/min/mg)と加齢に伴って緩やかに低下したのに対し、P10では181・105・82・48と急速に著明に低下した。これに対し、辺縁系非関連組織の遊離AMC量は、P10・R1ともに加齢変化を示さなかった。従って、マウスの脳では辺縁系特異的に、加齢に伴うプロテアソーム活性の低下によって、ユビキチン化された異常タンパク質が充分分解されずにニューロン細胞質に蓄積して封入体を形成すると考える。
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