研究概要 |
T型カルシウムチャンネルは深い膜電位で開口するため、細胞の興奮性の制御に重要な役割を果たしている。neuropeptideY (NPY)は36アミノ酸からなる神経ペプチドで、中枢および末梢神経系に広く分布する。両者の分布には相関が認められ、中枢および末梢のいずれにおいてもNPYを含有するニューロンの投射を受けるニューロンはT型カルシウムチャンネルを発現しており、機能的な関連性が推測される。本研究は、T型カルシウム電流に与えるNPYの作用を検討することを目的としている。研究代表者は平成15年度までに未分化NG108-15細胞を用いて、(1)Ba^<2+>をチャージキャリヤーとしてパッチクランプ(全細胞記録)を行い、T型カルシウム電流の発現を確認し、本電流がNPY適用により同電流が約10%増大すること、(2)この増大は、活性化および減衰のキネティックスには影響を与えなかったが、活性化のV_<1/2>が過分極側に移動すること、(3)NPY受容体サブタイプのうち、Y_1受容体およびY_2受容体が相加的にT型カルシウム電流を増大させていることを明らかにし、学会発表を行った。平成16年度は、これらのデータをまとめて、論文(Okada et al.,2004)として発表した。さらに、このNG108-15細胞で認められたT型カルシウム電流のNPYによる増強が脳内においても認められるかを検討するため、両者を発現するラット海馬を標本として、スライス培養、並びにスライスパッチクランプの実験系を立ち上げた。これまでに、ラット培養海馬スライスCA1領域の錐体細胞における電位依存性電流の発現の確認およびその性質の検討を行い、これらへのNPY適用の効果を検討中であるが、今のところ特筆すべき結果を得ていない。
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