研究課題/領域番号 |
15500256
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
谷浦 秀夫 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (80263325)
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研究分担者 |
檜井 栄一 金沢大学, 薬学部, 助手 (70360865)
米田 幸雄 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (50094454)
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キーワード | Necdin / E2F1 / p75NTR / Neuron / cell death / MAGE family / Prader-Willi syndrome / NRAGE |
研究概要 |
Necdinは、神経発達障害であるPrader-Willi症候群の原因遺伝子と考えられ、ニューロンの分化や細胞死に関与している。Necdin蛋白質のアミノ酸配列は、MAGEファミリーと相同性があり、その中でもMAGEL2(necdin-like1)とMAGEG1(necdin-like2)は、Prader-Willi症候群欠損領域である染色体15qにnecdinとともに存在している。そこでnecdinおよびMAGEL2、MAGEG1をnecdin結合蛋白質との関連について生化学的、機能的に解析した。Necdinは増殖細胞に対してその増殖抑制能を有しているが、colony formation assayおよびBrdU incorporation assayで解析したところ、MAGEG1にはnecdinと同様の細胞増殖抑制能が認められたが、MAGEL2には認められなかった。Necdinの細胞増殖抑制能は、細胞周期調節に関与する転写因子E2F1との結合とその転写活性の抑制によるものと考えられているが、MAGEG1もまたE2F1と結合し、その転写活性を抑制することがわかった。またE2F1は、ニューロンにおいては細胞死のmediatorとなっていると考えられている。分化誘導を行ったN1E-115 neuroblastoma細胞に遺伝し導入を行ったところ、necdinおよびMAGEG1の発現はE2F1によって誘導される神経細胞死に対して抑制的に働いた。これに対してMAGEL2にはこのようなE2F1との相互作用は認められなかった。p75NTRは、NGFなどの神経栄養因子に対してTrkAなどの高親和性受容体と複合体を形成して働く膜受容体である。逆にp75NTRとTrkAとの解離はNGFによって神経細胞死を誘導するがその分子機構についてはよくわかっていない。MAGEファミリーに属するNRAGEはp75NTRと結合し、p75NTRとTrkAを解離させ、神経細胞死を誘導することが報告されている。分化誘導を行った胚性がんP19細胞を用いた内在性蛋白質および強制発現系において免疫沈降を行ったところ、necdinおよびMAGEG1とp75NTRの特異的な相互作用が認められ、MAGEL2とは認められなかった。さらに免疫細胞染色を行いnecdinの分布をみたところ、E2F1との共発現ではnecdinは主に核に局在し、p75NTRとの共発現では主に細胞膜に局在することがわかった。分化誘導を行ったN1E-115 neuroblastoma細胞に遺伝し導入を行ったところ、p75NTRの発現はE2F1によって誘導される神経細胞死を増強し、その際にはnecdinとE2F1の結合を解離させnecdinを細胞膜へ誘導することが認められた。したがってp75NTRシグナルによって誘導される神経細胞死の分子機構の一つとして、necdinとE2F1の結合の解離が考えられる。またMAGEファミリー間でさまざまな共通の結合パートナーが存在し、ニューロンの分化、細胞死を調節していると考えられる。
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