研究概要 |
神経細胞は機能によって、単極性、双極性、偽単極性、多極性など形態的な分化をとげる。これは脳をはじめとする神経系の複雑な機能に深くかかわる重要な事項であるが、その機構についてはほとんど明らかにされていない。マウスのニューロブラストーマとラットのグリオーマのハイブリッドNG108細胞は、優れたコリン作動性ニューロンのモデルであり、通常cAMPを培地に添加することで多極性ニューロンの形態に分化する。ところが、平滑筋の培養細胞SM3と混合培養すると、有意に単極性、双極性ニューロンに分化するものが増加することが明らかになった。 このNG108-SM3細胞混合培養系を用い、ニューロンの形態分化(表現型の頻度)と、培養条件(細胞密度、培地、血清の影響、培養時間)の関係を検討した。また、この作用がフィルターを介しても見られることから、平滑筋細胞の分泌する液性因子が関与することを明らかにした。次に伸張した神経突起が樹状突起、軸索に分化しているか否か、細胞骨格の特異抗体(tau,MAP2)を用い、免疫細胞化学的に解析した結果、一部のニューロンにおいて、突起の構造的分化が起こっていることが示された。同時に平滑筋培養細胞も形態的により分化することも明らかとなった。 また、超高圧電子顕微鏡を用い、神経突起の構造解析を行い、数珠状の膨らみ(バリコシティ)が遊離したチュブリンのプールであることを示唆する結果を得た。傾斜撮影によって得られた画像をコンピュータを用い3次元的な立体に再構築する方法を導入し、神経突起の構造解析のための免疫染色法の検討を行った。さらに、ニューロンの形態分化に関わる因子を検索する予備的な実験として、フィルターインサートを介した混合培養系から、mRNAを精製し、特異的な遺伝子発現についてDNAアレー法での検討を開始した。
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