昨年度に引き続き、ラットの片側顔面神経に過酸化水素あるいはパーオキシナイトライトを注入し運動神経を傷害させて貪食細胞が出現した時に、新たに誘導される分子をサブトラクション法で返し繰り返し検索したが、その結果は昨年度同様、貪食性に関係のありそうな膜蛋白、膜酵素、転写因子の類いは検出できなかった。 一方、昨年度、培養ミクログリアをPMA処理することにより貪食性を欠失させることができたが、この非貪食性ミクログリアに存在せず貪食性ミクログリアに存在するMW 90kDaのタンパク質(p90)を貪食関連分子の候補として分離することを試みた。p90は、ミクログリアホモジネートをDEAE Sephadex、ヒドロキシアパタイトおよびSephacryl S200によって部分精製することにした。P90はヘパリンSepharoseやConA Sepharoseには一部分吸着したが、大部分は非吸着性だったので、これらは使用しないことにした。また、クロマトフォーカシングでは、pH4.8を中心として広く溶出されたため、これも精製には使用しないことにした。上記3段階の操作で得られたp90標品は、最後にトランスブロットによりPVDF膜上に回収した。PVDF膜上のp90を、N末端アミノ酸配列分析にかけた結果、Asp-Asp-Glu-Val---(未公開)のような配列が得られた。しかし、これは夾雑タンパクの結果であり、p90本体はそのN末がブロックされている可能性もあるため、断片化によりアミノ酸配列を調べる必要が残されている。 以上、ミクログリアの貪食関連分子の候補をひとつ検出することができた。今後、p90を同定するとともに、その機能の解析を行うことが重要と考えられる。
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