本研究は、正常脳内では、貪食能を持たないミクログリア溝どのようなメカニズムで貪食細胞に変貌するのかを明らかにしようとしたもので、主に貪食性の発現に関係する分子を探索することに目的をおいたものである。 初年度は、ラット顔面神経に毒性レクチンを注入し神経細胞死誘導モデルを作成する予定であったが、その神経毒レクチンRCA60は輸入禁止品目にあたり入手できないため、代用として過酸化水素やパーオキシナイトライトを使った系を確立した。 2年目には、上記の系を使用し、運動神経に細胞死を起こし、ミクログリアが貪食細胞に変貌する時に誘導される分子をサブトラクション法で探索した。その結果、貪食細胞が生じる顔面神経核に誘導される分子として様々な機能タンパク質が検出されただ、大部分はプロテアーゼの類およびその勉の酵素、細胞骨格タンパクであり、貪食性に関連する分子は発見できなかった。一方、培養系で、貪食性ミクログリアをphorbol myristate asetate (PMA)処理することにより非貪食性に変換することに成功した。この系を使用することで、貪食特異的タンパク質の探索を行うことにした。 最終年度は、前年に引き続き、様々なサブトラクション法により貪食誘導分子の探索を行ったが、特筆できる結果は得られなかった。一方、培養系で、貪食性ミクログリアと非貪食性ミクログリアのタンパク質を比較した結果、貪食細胞に特徴的な、分子量約90kDaのタンパク質(p90)を検出することができた。大量の培養ミクログリアを使用して、DEAE Sephadex、ヒドロキシアパタイト、SephacrylS200およびポジアクリルアミド電気泳動によりp90を分離し、N末端アミノ酸配列分析を行ったところ、ある配列(Asp-Asp-Glu-Val---)(未公開)が明らかになった。今後、このp90の同定とアミノ酸配列結果の再確認が必要であるが、ミクログリアの貪食関連タンパク質の候補として興味が持たれる。
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