研究課題
基盤研究(C)
神経の部分切断や神経損傷では自発痛、痛覚過敏反応やモルヒネの効かないアロディニア(触覚刺激による痛み)を伴う難治性慢性痛に移行する。アロディニアは第5脊髄神経切断マウスを用いて、脊髄後角における神経可塑性に関与する因子解析を行った。オピオイド受容体NOPの非ペプチド性拮抗薬JTC-801を用いて、NOPリガンドのノシセプチンが炎症性疼痛、神経因性疼痛の両方に関与していることを示した。脊髄より得た標本にCa^<2+>プローブおよびNOプローブ試薬を負荷し、細胞内Ca^<2+>濃度、NOの動態をイメージングした。免疫組織学的、酵素組織化学的方法により神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)が脊髄後角に存在することを示したが、痛みの興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が実際にNO産生を引き起こすことをNOプローブ試薬を脊髄スライス標本に負荷して確認した。PGE_2やノシセプチンによっても、NO産生は引き起こされ、アロディニアによる痛みに関与する神経回路における神経可塑性にグルタミン酸-NOS-NO経路が深く関わり、特に、nNOSがNO産生に関与していることを明らかにした。NMDA単独では顕著なNO産生を引き起こさない濃度のNMDAとPACAPの同時投与により相乗的反応を細胞内Ca^<2+>、NOの両方で惹起することを明らかにした。これらの結果から、正常時の触覚刺激の伝達では、シナプス前終末からグルタミン酸が放出され、興奮が伝達されるが、nNOSの多くは活性が低くNO産生は少ない。神経損傷により後根神経節でPACAPの発現が増大し、シナプス後ニューロンに情報が伝達されるとそれがNMDA受容体に作用し、nNOSの膜への移動-活性化を引き起こすと、触覚刺激の情報入力により健常時に比べて多量のNOが産生される。それが、シナプス前および後ニューロンに作用して、神経因性疼痛維持に関わっていることを強く示唆した。
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