研究課題
平成16年度までの研究期間において、神経因性疼痛に対する5-HT_<2A>受容体アンタゴニストの緩和作用機構を明らかにするため、坐骨神経部分結紮による痛覚過敏モデルラット(Bennettモデル)を作成し、痛覚閾値の検定を行い、末梢局所の5-HT_<2A>受容体蛋白の機能的変化が痛覚過敏発症に関係している可能性を明らかにしてきた。本年度は、5-HT受容体アンタゴニスト感受性の痛覚過敏状態における内在性セロトニンの動態の関与の可能性および下肢皮膚組織内の神経成長因子(NGF)の関与の可能性について検討した。1)Bennettモデル動物において、非選択的MAO阻害薬とされるquinacrineの下肢皮下投与による痛覚閾値に対する影響を検討した。その結果、quinacrine投与は下肢における痛覚閾値を有意に上昇させた。このquinacrineによる痛覚閾値上昇作用は痛覚過敏下肢においてより著明に認められた。これらの結果は、皮膚局所におけるセロトニン遊離の亢進が痛覚過敏に関係する可能性を否定するものであった。すなわち、quinacrineによる痛覚閾値上昇作用は、そのphospholipase A_2抑制作用に伴うプロスタグランジン系の抑制作用によるものである可能性が示唆された。2)Bennettモデル動物において、神経成長因子(NGF)誘導薬である4-methylcatechole(4-MC)の下肢皮下投与による痛覚閾値に対する影響を検討した。その結果、4-MC投与により下肢における痛覚閾値は有意に低下し、痛覚過敏が誘導された。この薬物作用は、痛覚過敏下肢のみならず、正常下肢においても同程度に明瞭に認められた。これらの結果は、痛覚過敏の発症にNGF遊離過程が関与しており、坐骨神経部分結紮および4-MCによるNGF誘導の機構は異なったものであることを示唆するものであった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Neurochemistry International 47・6
ページ: 394-400