GPI-アンカー型神経接着分子を介するシグナル伝達機構の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15500275
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 武田 泰生 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教授 (60245462)
• キーワード: 神経接着分子 / GPI-アンカー型 / コンタクチン / シナプス / PSD-95

研究概要

免疫グロブリンスーパーファミリーに属する神経接着分子コンタクチン群はイノシトールリン脂質を介して細胞膜表面に結合するGPI-アンカー型の分子であり、コレステロールに富むlipid raft(ラフト)領域に存在することが知られている。本研究は、脳神経系のシナプス伝達におけるコンタクチン群の機能を明らかにすることを目的としており、本年度は、シナプス膜由来のラフトにおける局在ならびに後シナプス肥厚部(PSD)での分子間相互作用について検討した。まず、ラット大脳皮質由来のシナプトゾームからラフトを調製し、ウェスタンブロットを用いて、コンタクチン分子群ならびに各種のシナプスマーカー蛋白質のラフトへの局在の有無について検討した。コンタクチン、NB-3およびTAG-1はSrcファミリーチロシンリン酸化酵素のfyn、シナプス前マーカーであるシナプトフィジン、ならびにシナプス後マーカーであるPSD-95の一部と共にシナプスラフトに局在した。同スーパーファミリー分子である膜貫通型のL1、NrCAMはラフトより高密度領域に存在した。一方、胎生16日齢のラットの大脳皮質から調製した初代培養神経細胞を用いて抗体による二重染色を行った結果、コンタクチンおよびNB-3はシナプス部位にクラスターを形成し、PSD-95とほぼ同じ局在を示すことがわかった。さらにこのクラスターはガングリオシド合成阻害剤のfumonisn B処理により消失した。次に、これらの分子群とシナプス伝達との関連性を調べる目的で、各抗体を用いた免疫沈降実験を行った結果、コンタクチンと共にPSD-95およびコンタクチンとシス型に結合するcasprが共沈した。一方、NB-3と共にPSD-95が共沈したが、casprの存在は認められなかった。以上の結果から、コンタクチンはcasprを介してPSD-95と会合し、シナプス関連蛋白質群の複合体の形成に関与する可能性が示唆された。現在、分子間相互作用についてより詳細な検討を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Takeda, Y., Akasaka, K., Watanabe, K.et al.: "Impaired motor coordination in mice neural recognition molecule NB-3 of the contactin/F3 subgroup."Journal of Neurobiology. 56. 252-265 (2003)
• [文献書誌] Li, H., Takeda Y., Watanabe, K.et al.: "Aberrant responses to acoustic stimuli in mice deficient for neural recognition molecule NB-2."European Journal of Neuroscience. 17. 929-936 (2003)
• [文献書誌] Sakamoto, T., Takeda, Y., Watanabe K.et al.: "Adenoviral gene transfer of GDNF, BDNF and TGFbeta 2, but not CNTF, Cardiotrophin-1 or IGF1, protects injured adult motorneurons"Journal of Neuroscience Research. 72. 54-64 (2003)
• [文献書誌] Nie, D.-Y., Takeda, Y., Xiao, Z-C.et al.: "Nogo-A at CNS paranodes is a ligand of Caspr : possible regulation of K channel localization."EMBO Journal. 22. 1-13 (2003)
• [文献書誌] Hu, Q.-D., Takeda, Y., Xiao, Z.-C.et al.: "F3/Contactin acts as a functional ligand for Notch during oligodendrocyte maturation."Cell. 115. 163-175 (2003)