Iba1はミクログリア/マクロファージに特異的なカルシウム結合たんぱく質であり、単量体Gたんぱく質Racと協調的にミクログリアの強い遊走能・貪食能の分子基盤を構成すると考えられる。本研究では、Iba1のC末端断片をbaitとした酵母two-hybridスクリーニングによりIba1結合たんぱく質としてアクチン束化たんぱく質フィンブリンを同定した。細胞抽出液、あるいは精製たんぱく質を用いて生化学的にIba1とフィンブリンが直接結合することを示した。免疫染色を行い、M-CSFで刺激下でミクログリア細胞株MG5が形成する膜ラッフルに、貪食時に形成されるファゴサイティックカップにIba1とフィンブリンの一致する集積を示した。さらに、フィンブリンのアクチン束化能をIba1が増強することを明らかとした。ミクログリアの遊走・貪食の原動力はアクチン細胞骨格の再構成であるが、以上の結果はIba1とフィンブリンの結合が細胞骨格の制御に重要であることを示唆する。 一方、生体内・外でミクログリアを可視化する目的でIba1プロモーター/EGFPトランスジェニックマウスの作製を行った。Iba1ゲノムのクローニングを行い構造解析を行った。Iba1遺伝子は約5.5kbの比較的狭い領域に存在し、その中でミクログリア/マクロファージ特異的プロモーターと予想される部分、約1kbを同定した。Iba1プロモーターをEGFP cDNAと結合し、マウス受精卵にインジェクションし、トランスジェニックマウスを作製した。得られた7系統のマウスのうち1系統にミクログリア/マクロファージに特異的なEGFPのシグナルが観察された。現在さらに、Iba1プロモーターを活用したマウスを複数系統作製している。
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