研究概要 |
グルタミン酸トランスポーター(EAATs)は、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸をシナプス間隙から除去し、神経伝達を速やかに終了させる役割を担っている。これまで、ヒドロキシアスパラギン酸誘導体を各種合成・検討した結果、EAATsに対し強力な阻害作用を有する、DL-threo-beta-benzyloxyaspartate(DL-TBOA)の開発を行うことができた。DL-TBOAはEAATsの標準的な阻害剤として現在広く用いられている。さらに強力でサブタイプ特異的な阻害剤を創製することを目的に、DL-TBOAの・アナログを各種合成した結果、{[(Trifluoromethyl)-benzoylamino]benzyloxy}aspartate (TFB-TBOA)がDL-TBOAよりも強力な阻害活性を有することを発見した。TFB-TBOAはDL-TBOAよりも百倍以上強力に、EAAT1,2,3のグルタミン酸取り込みを阻害した。また電気生理学的な実験から、EAAT4,5に対しても、阻害剤として機能することを確認した。興味深いことにTFB-TBOAはDL-TBOAと異なり、非可逆的な阻害活性を示した。またTFB-TBOAをマウスの脳室内に投与したところ、けいれん様作用を示した。さらに20種類以上の神経伝達物質受容体・トランスポーターに対する影響を調べたところ、EAATsに対する特異的な阻害活性を示すことが確認された。以上の結果からTFB-TBOAはEAATsに対し特異的な阻害作用を示し、EAATsの生理作用解明に有用なツールとして期待できその成果をMolecular Pharmacology誌に発表した。 また海綿の抽出物の天然物ライブラリー(北里大学水産学部の酒井隆一助教授から供与していただいた)、英国トクリス社の化合物ライブラリーを用いてEAATsの阻害活性を示す化合物等をスクリーニングしたところ、いくつかの阻害活性を示すものが得られた。現在特異性や細胞毒性の有無等を検討中である。
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