研究課題
我々は、後部帯状回ニューロンが感覚刺激には応答せずに、特定の報酬獲得のための運動行為に応答し、報酬による運動の評価に関与することを発見している。また、後部帯状回と線維結合を有する海馬体は場所や状況に応じて応答性が変化することがわかっている。本研究では、文脈依存的な海馬体からの情報が運動評価に関与する後部体状回にどのように影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。そのために、感覚-報酬連合学習行動遂行中のラットの後部帯状回および海馬体から同時に多数のニューロン活動を記録し、ニューロン応答性の行動相関および相互相関法による両脳領域間のニューロン結合性の解析を行った。平成15年度には、既存の特殊脳定位固定装置およびニューロン活動記録システムを改良したデータ記録・保存・解析システムの構築が終了したため、平成16年度は、以下の手順により実験を遂行してデータの蓄積および解析を行った。手術:ウイスター系雄ラットを用い、麻酔下で脳内自己刺激用電極およびニューロン活動記録電極を目的の部位に挿入・固定した。訓練:正8角形のオープンフィールド内へ絶水したラットを入れ、点灯した場所へ行きレバーを押すと報酬を獲得することを学習させた。次に、4ヶ所のレバー設置地点で異なる報酬(脳内自己刺激(強および弱),水(多および少量))を獲得することを学習させた。ニューロン活動記録:この光-報酬-空間連合学習成立後、後部帯状回および海馬体のニューロン活動を同時に記録し、データ解析を行った。結果・考察:特定の場所での飲水行動中にのみ後部帯状回ニューロンと海馬体のニューロンの間に有意な相関を持つペアをいくつか発見した。ペアのニューロン発火タイミングのズレは約10ミリ秒であった。これらの結果は、海馬体から後部体状回への線維結合が、空間、報酬、運動の統合された情報を担っていることを示唆している。
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Neuroreport (in press)