ヒトに於いてP型Ca^<2+>チャネルの変異が運動失調を引き起こすことが最近注目を集めている。脊髄小脳変性症6型(SCA6)はP型Ca^<2+>チャネルのC末でCAGリピートが異常伸長することが原因で起こる遺伝性神経疾患である。私はこのSCA6と同様の変異を持つ組み換えP型Ca^<2+>チャネルを電位依存性Ca^<2+>チャネルのβ_1 subunitとbaby hamster kidney(BHK)細胞に発現させ機能解析をしたところ、チャネルの不活性化曲線が過分極側に有意に移動していた。中枢神経細胞にはβ_1 subunitの他にβ_4 subunitも豊富に発現している為、β_4 subunitを安定発現したBHK細胞にSCA6と同様の変異を持つ組み換えP型Ca^<2+>チャネルを一過性に発現させその機能を解析しようとした。同じコントロールのP型Ca^<2+>チャネルでもβ_4 subunitと共発現させると、β_1 subunitと共発現させた時よりも不活性化曲線が脱分極側に約15mVシフトした。これにより、ラットやマウスの小脳プルキンエ細胞のP型Ca^<2+>チャネルの性質に近くなった。従って、来年度以降このβ_4 subunitを安定発現したBHK細胞にSCA6と同様の変異を持つ組み換えP型Ca^<2+>チャネルを一過性に発現させ、β_1 subunitと共発現させた時の以前のデータと比較検討していきたい。今後、SCA6と同様の変異を持つ組み換えP型Ca^<2+>チャネルを発現させた遺伝子改変マウスを手に入れ、このモデルマウスを使ってP型Ca^<2+>チャネルの機能を解析しヒトの運動失調の病因を明らかにしたい。
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