本年度は本研究課題の最終年度にあたっており、これまでに着手した研究を継続するとともに、新たな解析として以下の項目について研究を行った。 ウサギの左右後肢同位相の跳躍運動誘発に脳幹下行性経路がどのように関っているかを知るために平成16年度に開始した研究を継続するとともに、ネコの左右後肢交互歩行運動の発現における脳幹下行性経路の役割との比較を行った。実験には上丘前縁-乳頭体後縁で上位脳を離断した除脳ウサギおよび除脳ネコを用いて、中脳歩行誘発野(MLR)への連続微小電気刺激によりウサギ跳躍運動及びネコ歩行運動を誘発した。ウサギ及びネコの延髄網様体部に幅3〜8mmの樹脂フィルム刺入により脳幹下行系路を段階的に切断しMLR刺激による跳躍または歩行運動誘発への影響について観察した。この結果、ウサギでは両側内側縦束を含む内側延髄網様体を切断してもMLR刺激によりほぼ正常パターンの跳躍運動が誘発されたが、ネコでは歩行運動誘発が大きく制限された。この結果、ウサギの跳躍運動発現には延髄網様体の外側を通過する下行系が重要な役割を持ち、ネコの歩行運動発現には延髄内側を通過する下行系が重要であることが示された。以上より両動物種間には中枢神経系内における歩行制御系の成立ちに違いのあることが強く示唆された。以上の成果を第28回日本神経科学大会(平成17年7月26〜28日:横浜)および第35回北米神経科学会議(平成17年11月12〜16日:米国・ワシントン)で発表した。 また、本研究課題を進める上で歩行パターンを異にするウサギとネコの歩行制御機構を比較・検討することは極めて重要なことである。しかし実験用ネコの入手は現在極めて困難であり、これを安定確保するために平成15年度より本学動物実験施設部において実験用ネコの自家繁殖に着手した。この自家繁殖開始に際して研究代表者が考案・作製した「猫繁殖用飼育ケージ」を実用新案として出願・登録した。
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