1)心筋特異的sarcolipin過剰発現トランスジェニックマウスの作成 マウスsarcolipin cDNA全長を、心筋特異的に発現するマウスα型ミオシン重鎖遺伝子プロモーターの下流に組み込こんだ遺伝子組換えベクターを作成、精製した。日本SLC社に依頼して、心筋特異的sarcolipin過剰発現トランスジェニックマウス作成を行った。サザンブロットによって、3系統のsarcolipin過剰発現トランスジェニックマウスが得られたことを確認した。現在、心臓での表現型解析を行うために、これらのマウスを繁殖させている。 2)sarcolipinプロモーター解析とその転写活性制御に関する研究 マウスsarcolipin遺伝子はマウス第9染色体上にある。このgenomic DNAの塩基配列がデーターベースとして公開されたため、その情報を基に、マウスsarcolipinプロモーター領域で、転写開始部位から2155塩基上流までをPCR法にてクローニングした。クローニングされたsarcolipinプロモーター領域を、段階的に短くしたプロモーター領域を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に組み込んだコンストラクトを、現在までに4種類作成した。2155塩基上流と481塩基上流の2種類のコンストラクトを、心筋由来のH9C2細胞に導入し、プロモーター活性を測定したところ、両者にプロモーター活性の違いは認められなかった。また、この2種類のコンストラクトを心室筋と心房筋の初代培養細胞にも導入してプロモーター活性をみたが、心室筋と心房筋とで、活性に差を認めなかった。従って、心房筋特異的な発現調整を行っている部位は、さらに別の部位にある可能性が示唆されたため、現在イントロン部位に注目し、その一部をクローニングしている。
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