条件付運動学習課題の課題制御システムを整備し、サルの訓練を開始した。課題制御のために、サルの眼前に視覚刺激呈示用のモニターを、手元に反応用の(押す、引く、回すことのできる)マニプレーターを配置した。課題では、モニターの中央に手がかりとなる図形を呈示し、数秒間の遅延期間後に、トリガー刺激を与える。動物が、呈示されていた手がかり刺激に基づいて、マニプレーターを押す、引く、あるいは回すのうち、適切な運動を行うと報酬を与える。通常の対照条件では、丸、三角、四角を手がかり刺激として呈示し、それぞれ押す、引く、回すを適切な反応とした。訓練によりこれらの視覚刺激と運動との結びつきについて、95%以上の試行で正しく反応できるようになった。続く学習条件では、一つの手がかりを新しい図形と入れ替え、この図形に対しては入れ替えた元の図形に対する反応を正反応とした。訓練により、動物は新しい刺激が呈示されても反応を試みるという課題のルールを学習でき、試行錯誤するうちに、正しい運動を連続して遂行できるようになった。ただし、繰り替えし正解するまでの試行数は、3回から50回以上とばらつきがある。 また、複数の単一神経細胞活動を同時記録するためのセットアップを行った。本研究では、複数(4ないし8本)の金属電極を同時に一つの領域に刺入し、それぞれの電極を別々に駆動して、各電極から単一神経細胞を記録する。このような多点電極記録に必要な電極ポジショニング・システムは自作した。他のサルでの予備的な記録実験で、大脳皮質前頭連合野と大脳基底核線条体から、それぞれ複数の単一神経細胞活動を数時間にわたり、安定して記録することができた。 さらに、多点電極記録法により得られるデータについて、各神経細胞間の関連を明らかにする新たな解析法の開発を進めている。
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