研究課題
糖尿病に伴う心筋活動電位持続時間の延長は、さまざまな糖尿病モデル動物において確認されている。糖尿病患者において、心電図上のQTcの延長と突然死のリスクの高さに相関があることが報告されており、活動電位持続時間の延長は糖尿病患者における予後悪化の原因因子の一つと考えられる。本研究では、活動電位持続時間延長をもたらす心筋イオンチャネル異常について、タイプ1糖尿病のモデルであるストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットと、遺伝性の自然発症糖尿病モデルであるWBN/Kobラットについて細胞電気生理学的方法と、分子生物顎的方法を用いて検討した。いずれの糖尿病モデルラットから単離した心筋細胞においても、活動電位延長の原因として一過性外向き電流の電流密度の減少が認められた。ラット心筋の位持続時間の決定に与るカリウムチャネルの候補として、電位依存性カリウムチャネルファミリーに属するKv1.2、1.4、1.5、2.1、4.2、4.3のαサブユニットについて、それぞれのcDNAの一部をプローブとしてノーザンブロット法により、メッセンジャーRNA(mRNA)の発現量を正常ラットと2種類の糖尿病モデルラットとで比較した。ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットでは、正常ラットと比較してKv1.2の有意な減少(30%)とKv1.4の有意な増加(90%)が認められた。それ以外のチャネルのmRNA量には有意な差は認められなかった。次にWBN/Kobラットについて検討したところ、同じようにKv1.2のmRNAの減少傾向とKv1.4のmRNAの増加傾向が認められた。ラット心筋における一過性外向き電流の責任チャネルはKv4.2とKv4.3であると考えられているが、いずれの糖尿病モデルラットにおいても、これらのmRNA発現量は低下していなかったので、電気生理学的な手法で認められた一過性外向き電流の減少をmRNA量の変化によって説明することは困難である。一過性外向き電流の減少になんらかの転写後の蛋白合成抑制機序が働いている可能性が考えられる
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Japanese Journal of Electrocardiology Vol5,Suppl.1
ページ: S-1-105
日本生理学雑誌 67巻2号
ページ: 94