研究概要 |
ヒト熱帯熟マラリアに対して感受性を持つリスザルを使用してマラリア研究に有用な動物実験モデルを確立すること、さらにリスザルに対して感受性を持つ麻疹ウイルス(MV)をワクチンベクターとして、マラリア抗原を挿入した組換えウイルス(rMV)を作製し、このrMVの感染防御効果を検討し、ワクチンを開発することを目標とした。平成15年度は、マラリア原虫感染血液ストックとマラリア抗原組換えMV(rMV(PfEMP-1))の作製を行った。平成16年度は、感染実験によるリスザルの免疫反応の解析は重要であるが、解析系がリスザルではまだ確立されていないため、リスザルの免疫担当細胞表面抗原を認識する抗体の探索とインターロイキン4(IL-4)の塩基配列の決定を試みた。抗体の探索には、ヒト用の抗体を用いて、リスザルの細胞との交叉性を調べた。ヒトの15種類のCD抗原に対して開発された41個のモノクローナル抗体の交叉性を調べた結果、23個のモノクローナル抗体で交叉性が見られた。CD3(T細胞),CD4(ヘルパーT細胞),CD8(細胞障害性T細胞),CD20(B細胞)といった細胞表面抗原に対して反応する抗体の発見は、免疫応答に対してリンパ球サブセットの変化を解析する上で重要であると考えられた。また免疫応答に対してサイトカインが関わっていることが知られているが、リスザルでは、IL-1β,2,5,6,10の塩基配列が報告されている。IL-4も多機能サイトカインとして重要と思われるので、塩基配列の決定を試みた。RT-PCRと3'RACE法によりヒトや他のサルのIL-4塩基配列と相同性が高い393塩基をクローニング出来たが、5'RACE法により5'末端部分をクローニングすることが出来なかった。プライマーを変更して5'RACEを行ってみたがクローニングすることは出来なかった。最終目的であるリスザル、マラリア原虫、組換え麻疹ウイルスを使ったワクチン実験までは到達することが出来なかった。
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