タモキシフェン誘導型Creリコンビナーゼは、MerCreMer(ドイツ・ケルン大・Reth博士より分与)を使用した。全身性に発現することが期待されるCAGプロモーター(阪大・宮崎 純一教授より分与)支配下でMerCreMer cDNAを発現するトランスジェニックマウスを、C57BL6/Jの受精卵への顕微注入法によって5ライン樹立した。RT-PCRおよびWesternブロット解析によって、全系統でMerCreMerが発現していることを確認した。 次に、ROSA26Rマウスとの2重トランスジェニックマウスにおける、MerCreMerによるタモキシフェン依存性の遺伝子組換えについて検討した。妊娠マウスへのタモキシフェンの腹腔内投与による胎仔マウスでの遺伝子組換え、成体マウスへの長期間のタモキシフェンの腹腔内投与による、成体組織での遺伝子組換えについて検討したが、遺伝子組換えの指標となるレポーター遺伝子の発現誘導は認められなかった。また、副作用による致死的効果が認められる程度の多量のタモキシフェン投与によっても、レポーター遺伝子の発現誘導は認められなかった。これらのことから、生体においてタモキシフェン誘導型Creリコンビナーゼを利用するためには、誘導方法やCreリコンビナーゼの発現量を改善する必要があると考えられた。 そこで、1)MerCreMerに代えてCreMerを使用する(タモキシフェン非存在下での活性化が起こりやすいが、一方でタモキシフェンによる誘導がかかりやすい)、2)CreMerの発現量が高いトランスジェニックマウスを作成するために、マウスES細胞への遺伝子導入と高発現クローンの選択を行った後にマウス個体の作出を進める、の2点を改善点として、更なる検討を進めている。現在、CreMer高発現ES細胞のクローンの選択を行っている。
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