研究概要 |
本研究では,通常食ならびに高脂肪食負荷による実験的肥満におけるLPL遺伝子導入(Tg)ウサギの糖代謝能を中心に検討を行ってきた。以下にこれまでの結果をまとめると,(1)通常食飼育下におけるLPL Tgウサギの耐糖能に関する検討では,糖負荷試験,インスリン負荷試験,グルコースクランプ試験等の結果から,LPL Tgウサギではインスリンに対する感受性が亢進していることが示唆された。また,(2)高脂肪食負荷による実験的肥満に関する検討では,血中のグルコースおよびインスリン値は,対照群での高脂肪食負荷後の上昇に対し,LPL Tgウサギでは上昇は観察されなかった。高脂肪食負荷後の糖負荷試験でも,血中のグルコース,インスリンおよびFFAのいずれもLPL Tgウサギで低い値を示し,曲線下面積は有意に低値であった。MRIによる観察では,腹腔内の脂肪沈着がLPL Tgウサギで少なく,実際の脂肪重量も対照群に比べ有意に少ないことが確認された。病理学的観察では,LPL Tgウサギの腹腔内の脂肪細胞の大きさが対照群の脂肪細胞に比べ小さいことなどが観察された。さらに,(3)LPL Tgウサギと家族性高脂血症のモデル動物であるWHHLウサギとの交配実験においても,LPL Tg WHHLウサギと対照WHHLウサギの糖代謝能に通常食飼育下では差は認められなかったものの,高脂肪食負荷後では,LPL Tg WHHLウサギで脂肪沈着の抑制,糖負荷試験におけるインスリンの推移ならびに曲線下面積で低値が観察された。これらの結果から,LPL Tgウサギでは高脂肪食負荷による肥満の抑制,さらには実験的肥満によって誘導されるインスリン抵抗性などの耐糖能異常が改善されることが示唆された。LPLの過剰発現によりインスリン抵抗性が認められたとするこれまでのLPL Tgマウスでの報告に対して非常に興味深い結果と考えられる。
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