研究概要 |
Es細胞の品質管理システム構築するに先立ち、本年度はわが国で維持継代されている細胞の遺伝的品質の現状を把握するため、われわれの施設に持ち込まれたES細胞を用いて染色体の異常頻度とその詳細、およびその一部についてマウスに戻しgermline transmissionの有無を検討した。 【材料および方法】ES細胞;2002年1月〜2003年12月の2年間にモニタリングセンターに持ち込まれた18施設由来367株の染色体標本で(1)ギムザ染色を行い、株毎に50コの核について染色体数をカウントし、(2)367株の中からランダムに選んだ株についてQH染色を行い、それぞれ20〜50コの核について核型分析を行った。さらに、(3)2株についてマイクロインジェクション法によってマウス胚に導入して得られたキメラマウスから次代を作出し、germline transmissionの成否を調べた。【結果】(1)染色体数:67.0%(13施設由来246株)が40本を示し、次いで15.5%(8施設由来57株)が41本、9.0%(6施設由来33株)が42本、3.8%(4施設由来14株)が39本であった。(2)核型:40本の染色体数を持つ36株中、異常核型を示したのは4株で、そのうち1株は40,X,+marを示した。染色体数が41本の5株は、41,XY,+8(3株)、41,XY,+18(1株)、41,XYm+11(1株)であり、42本の3株は、42,XY,+8,+11(2株)、42,XY,+6,+8(1株)を示した。(3)40本の割合が50核中80%と88%の2株はいずれもgermline transmissionが認められた。【考察】(1)染色体異常は高頻度(33%)で見つかり、(2)核型異常は8番および11番染色体のトリソミーが多いこと、(3)染色体数が40本であっても核型が異常な場合のあることが示された。
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