研究概要 |
ES細胞の品質管理を行うにあたり必須な検査項目を確定する目的で昨年度に引き続き、由来の異なるES細胞について、その染色体数検査および核型解析を行った。本年度はこれに加え、マウス肝炎ウイルスおよびMycoplasma pulmonisについて微生物学的検査を実施した。 [材料および方法]ES細胞:本年度は新たにのべ43施設由来84検体(129系統由来59検体、TT2由来16検体およびC57BL由来9検体)について検査を実施した。染色体数はギムザ染色標本を用いて、核型検査はQH染色標本を用いて行った。染色体数については50個のメタフェースについて染色体数を算定した。微生物学的検査について、マウス肝炎ウイルス検査はPCR法により、M.pulmonis検査は培養法によって行った。 [結果]染色体数は39本を示したものが全体の3%、40,41,42および43本がそれぞれ67,17,12および1%であった。核型解析では染色体数異常を示した細胞では8番染色体のトリソミー、8および11番染色体のトリソミー、および6番および8番染色体のトリソミーが有意に観察された。細胞の由来によって異常の種類に違いは見られなかった。 微生物検査の結果、マウス肝炎ウイルス、M.pulmonisは検出されなかった。 [考察]染色体数異常を示す検体が30%以上見られたこと、および染色体数異常がgermline transmissionに影響することが昨年の結果から推察されており、ES細胞の品質管理項目には染色体数検査が不可欠であることが示された。また、今回微生物汚染の結果は得られず、わが国における微生物学的品質は良好に保たれていることが確認された。微生物学的検査については今後さらなる疫学調査が必要だと考えられるが、ES細胞の微生物汚染が、マウスに致死的なダメージを与えることを考えると、微生物検査も細胞の品質管理に重要な項目であると考えられた。
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