研究概要 |
本研究では、磁気的なイメージング手法を用いた前頭における言語機能の計測を試みた。具体的には、1,MEG計測手法の改善と予備実験、2,時間-周波数解析手法の確立、3,言語課題作成のためのfMRI計測、4.視覚呈示による課題遂行時のMEG計測および解析を行った。"1"〜"3"については"4"を行うための基礎研究という位置づけにあるので、ここでは、主に"4"について述べる。 前頭葉における脳磁界活動のfMRI計測の結果に基づき、課題の作成を行った。fMRI計測では、保有設備による制限のため視覚呈示による課題についてのみ行った。その結果、視覚呈示課題として試みた動詞想起課題およびカテゴリ選択課題において前頭部の脳活動が観測された。 次に、これらの課題のうち、カテゴリ選択課題によるMEG計測および解析を行った。解析手法として、時間-周波数解析手法を用いた。脳磁界の解析結果では、側頭葉を中心とした活動源が推定されるのに対し、前頭葉を起源と推定される活動源がほとんど存在しなかった。しかし、周波数解析あるいは時間-周波数解析手法によると、前頭葉付近の磁界信号と側頭葉付近の磁界信号では明らかな違いが見られた。脳磁界信号源の推定されることが多い側頭葉ではα帯域あるいはその近傍帯域の成分が強く、前頭葉ではそれよりも低い帯域の成分が強くなっていた。一方、文字の呈示に対しα帯域の成分が抑制される脱同期を示す被験者も存在しており、側頭葉の脳活動の大きさとα近傍帯域の増強が必ずしも相関しなかった。 これらの結果から、側頭葉の活動に対してはα近傍帯域が関連しており、前頭葉ではそれ以下の帯域が関連していると考える。したがって、言語課題に対する前頭葉の活動は、脳磁界では低周波でかつ刺激に対する同期性の悪い活動と考える。
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