研究概要 |
ヘマトクリット変化に敏感な磁気共鳴パラメータに着目し、脳機能賦活焦点で亢進している酸素代謝を秒単位の時間分解能で画像化する方法の開発を目的とし、本年度は赤血球量変化と酸素代謝変化がMR信号強度に与える影響を定量化することを目指した。毛細血管が支配的なモデル領域として筋組織でのMR信号および近赤外分光測定によるヘモグロビン変化を調べた。マンシェットの瞬時加圧(D.E.Hokanson, Inc.Rapid Cuff Inflator E-10)により下肢を鬱血させることで骨格筋中のオキシ・デオキシヘモグロビン量を広く変化させつつ、MRI (GE SIGNA Horizon LX 1.5T)と近赤外分光測定(オムロン非侵襲ハンディモニタHEO-200:現有)で下肢での測定を行った。その結果、T2^*強調MRI信号強度がデオキシヘモグロビン量のみにより決まるというBOLD (Blood Oxygenation Level Dependent)理論に従わない場合があることを示した。特に、マンシェット加圧を150mmHg以上としたとき、鬱血した下肢のデオキシヘモグロビン量は著しく増加したが、T2^*強調MRI信号強度は加圧前とほとんど変わらなかった。このパラドックス的現象は、強い鬱血時に血管外の筋組織中のミオグロビンがデオキシ化し常磁性体となることをモデル化することで解釈できた。すなわち、血管内のヘモグロビンがデオキシ化し常磁性体となっても、血管外のミオグロビンも常磁性化することで、毛細血管内外の磁化率の差が減少し、磁場の乱れが緩和される。さらに、マンシェット加圧によるミオグロビンのデオキシ化が遅筋、速筋で異なることも明らかにし、従来、バイオプシーでのみ知ることができた遅筋、速筋の区別が、MRIを用いて非侵襲的に求めることが可能となった。以上のことで、毛細血管が支配的な領域でのT2^*MR信号強度が赤血球量および酸素代謝を変えたときにどのように変化するかを定量的に明らかにした。
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