脳機能賦活焦点で亢進している酸素代謝を画像化する方法の開発を目的とし、次の順に研究を進めた。 1.毛細血管における酸素代謝変化がMR信号強度に与える影響の定量化 賦活部位の毛細血管ではヘマトクリットが顕著に増加する。そこで、ヘモグロビン量を広く変化させてそれに伴うMR信号変化を調べるため、マンシェットをさまざまな圧力で瞬時に加圧し下肢を鬱血させ1.5T MRIと近赤外分光測定で測定を行った。その結果、低酸素状態になり血管内のヘモグロビンがデオキシ化し常磁性体となっても、血管外のミオグロビンも常磁性化する場合、血管内外の磁化率の差が減少し、磁場の乱れが緩和される効果を確認した。 2.赤血球量および酸素化度を敏感反映するMRパラメータの解析 赤血球による静磁場の乱れに着目し、血液の横緩和時間の酸素飽和度依存性を詳細に調べた。その結果、酸素飽和度が約90%のとき横緩和時間が最大となることを明らかにした。この現象は、この酸素飽和度のとき赤血球と血漿の磁化率が等しくなることに起因している。さらに、血液に常磁性体MR造影剤を添加し血漿の磁化率を増加させることで横緩和時間が最大となる血液酸素飽和度が予想どおり低下することも示し、赤血球とその周囲の磁化率の差に依存する微細な磁場の乱れに起因するMR信号強度変化の全貌を明らかにした。 3.酸素代謝画像開発 以上の研究で、毛細血管領域では低濃度常磁性体MR造影剤を用い血漿の磁化率を制御することで赤血球の磁化率に依存したMRコントラストが得られるとの自信を深めた。従来のfMRIはさまざまな領域から流入する静脈血の磁化率変化を用いていたが、それとは異なり組織酸素代謝を忠実に反映する毛細血管での赤血球の磁化率変化を鋭敏に描出すべく、ラットを用いたMR撮像実験を進めている。
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