2年間の研究目標として、1.連続流人工心臓デザインの最適化、2.連続流人工心臓装着時の生体循環調節の検討、を策定した。この計画にしたがい、平成15年度は1)人工心臓デザインの最適化、2)連続流血液ポンプ装着時の自律神経活動度の検討、を行った。 <人工心臓デザイン>:これまでDD3型ポンプからDD9型までの系統的実験において、セラミクス製モノピボットの形状、インペラ背面血流速度を増加させるためのウオシュアウト・ホールの位置・形状の検討を重ねてきた。本年度はレーザー光-SiO2粒子追跡システムによる流れの可視化法、およびソルバー有限体積法によるピボット近傍流れの数値シミュレーションと現在までの動物装着実験結果を照合し、ウオシュアウト・ホールの位置・形状とインペラ(回転子)底面の最適ピボット高さを確定した。この成果に基づきポンプデザインを決定し、MC101型ポンプを製作した。1週間以内の予備的動物実験では、本ポンプ・ピボット近傍の血栓形成は皆無であり、長期維持に継続するべく系統的実験を開始する計画である。本ポンプの血栓形成様態は、ポンプ底面に装着したレーザーモニタシステムにより持続的にモニターされ、血栓形成・非形成に関する詳細な部位特異的情報が得られるものである。 <生体循環調節>:われわれは、重度のストレスにより動脈圧の低周波数パワースペクトルが抑制され、機械的循環補助により漸増することを臨床において見いだしている。特に心臓移植までのブリッジ使用を目的とした左心補助人工心臓使用患者3例においては、動脈圧の低周波数パワースペクトルは抑制されることなく維持され、本補助が自律神経系活動度の面からも循環維持に有効であることが裏付けられた。動物実験では、装着術直後動脈圧パワースペクトル計測と同時測定された血中カテコラミン(エピネフリン・ノルエピネフリン)濃度の一過性の増加を認めたが、低周波数動脈圧パワースペクトル値は抑制されず維持された。このことから動物は連続流ポンプに対し十分適応し、その反応は生理的範囲内にあると考えられるが、さらに実験を重ねる計画である。 以上の研究成果は別掲のように報告した。当該年度の所期の成果をあげ得たと考えられ、平成16年度の研究を策定通り行う予定である。
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