研究概要 |
本研究では,植込み型closed-loop血糖制御システムである植込み型人工膵島の制御部門における門脈内インスリン注入の意義と有用性を解析することを目的とし、以下につき検討した. (1)コンパートメントモデルによる門脈内インスリン投与時の血漿インスリン動態解析 濃度4U/mlの速効型インスリン0.2U/kgを糖尿病犬の門脈内及び末梢静脈内に投与し,平均血漿インスリン濃度を求め比較検討した.その結果、末梢静脈内投与時に比し門脈内投与時の血漿インスリン濃度は投与後5分および10分後に有意に低値を示した。この際、血糖値を一定に保つために要したブドウ糖注入率を比較した結果、門脈内投与時と末梢静脈内投与時の間に差を認めなかった。 (2)Closed-loopインスリン門脈内注入アルゴリズムの作成 健常個体における比例・微分動作に基づく血糖値に対する血漿インスリン応答の関係を,(1)で求めた1-コンパートメントモデルに当てはめ,血糖値に対するインスリン門脈内注入率を与える関係式を求めた.次に(1)で得られた結果を基にモデルにおける各速度定数を算出することにより,比例微分動作に基づいた門脈内インスリン注入アルゴリズム(IIR=Kp・BG(t)+Kd・BG(t)/dt+Kc)の各パラメータK_p=0.034、K_d=0.291、K_c=-2.42を算出した。 (3)コンピュータを用いたsimulation study これまでの研究で得ている健常人における75g経口ブドウ糖負荷時の血糖応答反応を再現した際のインスリン注入パターン及び血漿インスリン動態を,門脈内インスリン注入アルゴリズム作動時においてsimulationし,静脈内及び腹腔内注入アルゴリズム作動時と比較検討した.その結果、末梢静脈内投与時と門脈内投与時の血糖動態は有意差を認めず、腹腔内インスリン注入時より良好な血糖制御が可能であることが示された。
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