研究課題/領域番号 |
15500318
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西田 健朗 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (50336244)
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研究分担者 |
荒木 栄一 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (10253733)
榊田 典治 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (50170577)
西川 武志 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (70336212)
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キーワード | 人工膵島 / 門脈内インスリン注入 / インスリン注入アルゴリズム / コンパートメントモデル / net hepatic glucose balance |
研究概要 |
本研究では,植込み型closed-loop血糖制御システムである植込み型人工膵島の制御部門における門脈内インスリン注入の意義と有用性を解析することを目的とし、昨年度に開発した門脈内インスリン注入アルゴリズムを用いて、以下につき検討した. (1)インスリン注入経路の違いによる肝糖取り込みの検討 インスリン注入経路の違いによる肝糖取り込みを検討すべく、内因性インスリン分泌をソマトスタチンにより抑制した糖尿病モデル犬に対し、動静脈較差法によるnet hepatic glucose balance (NHGB:肝静脈血糖値×肝静脈血流量-門脈血糖値×門脈血流量-肝動脈血糖値×肝動脈血流量)を用い検討した。その結果、末梢静脈内インスリン注入群に比し、門脈内インスリン注入群においては、NHGBは有意に糖取り込みに傾いた。すなわち、門脈内インスリン注入により、肝糖放出抑制及び糖取り込み亢進を生じることを示した。 (2)インスリン門脈内注入アルゴリズム作動時における経口ブドウ糖負荷時の血糖制御 内因性インスリン分泌を抑制した糖尿病モデル犬に対して、門脈内(IP)及び末梢静脈内注入(IV)アルゴリズムを組み込んだベッドサイド型人工膵島を用いて、2g/kg経口ブドウ糖負荷時の血糖制御を行った。IP及びIVアルゴリズム作動時において、血糖コントロールに差を認めず、両者とも良好なコントロールを示した。IPアルゴリズム作動時の末梢静脈インスリン濃度はIVアルゴリズム作動時に比し有意に低値を示し、IPアルゴリズム作動時の門脈血中インスリン濃度はIVアルゴリズム作動時に比し有意に高値を示した。IPアルゴリズム作動時のNHGBはIVアルゴリズム作動時に比し有意にuptakeに傾いた。 以上、インスリン門脈内注入により、肝の糖代謝への関与をより密にすることで糖処理能を高めること、動脈硬化促進因子としての末梢血高インスリン血症を惹起することなく血糖制御が可能であること、が示され、人工膵島におけるインスリン注入経路としての門脈内注入の有用性が示唆された。
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