研究概要 |
体内時計の中枢を含む脳の機能に対して電磁界が及ぼす影響について研究を行った.パルス磁気による経頭蓋磁気刺激が脳機能に与える影響についての検討を行なった.神経細胞の興奮特性ならびに大脳皮質の構造を考慮しパルス磁気が脳の活動に及ぼす影響について実験を行い検討した.大脳皮質の一次運動野を対象として,腕および手の誘発筋電図を指標としてパルス磁気が脳活動に与える影響を評価した.被験者の頭部右側にパルス磁気を8字型コイルにより照射し、左の腕および手から誘発筋電図を表面電極により計測した.8字型コイルの中心を頭表上で固定し,コイルを360°回転したときの誘発筋電図の振幅の変化を観察した.8字型コイルの中心直下の誘導電界が水平方向から上方40°の向きになるパルス磁気の照射を行ったときに短拇指外転筋に最大の筋電図が計測された.このとき,短拇指外転筋を支配する部位として推定された一次運動野内の部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分は,コイル角度が40°のときに最大となった.また,他の筋についても同様の検討を行った.その結果,一次運動野内において対象の筋を支配すると推定された部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が最大となるようにパルス磁気の照射を行ったときに対象の筋に大きな振幅の筋電図が計測されることを確認した.これらの結果より,パルス磁気を脳に照射したとき,それぞれの部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が大脳皮質の機能に影響を与える主な要因であることを見出した.この知見を基にして視交叉上核を含む体内時計システムへのパルス磁界の影響について現在研究を継続して行なっている.
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