1.ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体であるプルロニック(PLF-127)および豆科植物タマリンドの種子中に存在するキシログルカン多糖の側鎖ガラクトースを酵素で部分分解した物質(GXG-TG)は、低温では液体でゾルであるが体温ではゲルを形成する性質があることを確認した。本研究では、熱応答性ゲル化を示すプルロニックとキシログルカン多糖の胃内滞留型徐放性液剤としての有用性を比較・検討した。モデル薬物として、非ステロイド性抗炎症剤(インドメタシン、ケトプロフェン)を用いた。熱応答性ゲル剤からの薬物放出には、徐放性のあることが判明した。GXG-TGからのin vitro薬物放出速度はPLF-127より速く、これはプルロニックのゲル濃度がきわめて高いことや両者のゲル構造の違いに起因するものと考えられた。 2.高分子微粒子製剤は、薬物の徐放化や標的化など様々な機能を付与できる薬物担体として注目されている。ナノ粒子と上記熱応答性ゲル剤を組み合わせることにより、薬物の吸収をさらに促進・制御できることが期待された。そこで、ゲルからの薬物吸収を改善するために、ポリ-n-ブチルシアノアクリル酸(PNBCA)ナノカプセルを用いることを試みた。PNBCAナノカプセルは、Fallouhらの界面重合法に準じて、薬物としてインドメタシンを用いて調製した。走査型電顕写真により、界面重合法により球状のナノカプセルが得られることを確認した。グリーン径から算出した平均粒子径は約188nmだった。このインドメタシン含有PNBCAナノカプセルは、最終的にコロイド状の懸濁液として得られ、薬物が溶解した安息香酸ベンジルの内層がきわめて薄いPNBCAの皮膜で覆われた脂溶性のナノカプセルであることが推察された。
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