研究概要 |
1.熱応答性ゾル-ゲル転移を示すプルロニック及びキシログルカン多糖あるいはイオン応答性ゾル-ゲル転移を示すペクチンの興味ある性質に着目し、これらのインテリジェント高分子を利用した徐放性液剤の開発研究を行った。その結果、プルロニックやキシログルカン多糖の熱応答性ゲル化には数分の時間を要するのに比べ、ペクチンのイオン応答性ゲル化はほぼ瞬時に起こることが判明した。薬を投与する時にはゾルであるため容易に適用でき(易服用性)、また胃内ではゲルとなるために薬の徐放性や胃内滞留性が期待できることから、本液剤は小児や高齢者あるいは固形製剤の経口投与が困難な患者に適した徐放性製剤となることを示した。 2.高分子微粒子製剤は、薬物の徐放化や標的化など様々な機能を付与できる薬物担体として注目されている。ナノ粒子と上記徐放性液剤を組み合わせることにより、薬物の吸収をさらに促進・制御できることが期待された。そこで、熱応答性あるいはイオン応答性ゲル化機能を付与したインテリジェント液剤からの薬物吸収をさらに促進・制御するために、ポリn-ブチルシアノアクリル酸(PNBCA)ナノカプセルの調製を試みた。界面重合法により、粒子径が約188nmのインドメタシン含有PNBCAナノカプセルが得られることを確認した。また、超遠心分離法により測定した薬物含有率は76.6%±1.2(平均値±S.E.,n=8)だった。このインドメタシン含有PNBCAナノカプセルは、最終的にコロイド状の懸濁液として得られ、薬物が溶解した安息香酸ベンジルの内層がきわめて薄いPNBCAの皮膜で覆われた脂溶性のナノカプセルであることが推察された。
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