研究概要 |
濾液再生型血液濾過システムを構築する上で、本年度は既成人工肺を用いた純水回収実験を市販の人工肺を用い実施した。 1)膜蒸留実験(温度変化):膜を介した両流体の流量、すなわち高温液側(血液側)および冷却液側(回収液側)流量(QH, QL)を一定とし、冷却液側供給温度(TL)を変化させたときの水分透過量(VE)を求めた。どの条件においても経時的な水分透過量は概ね比例的に単調増加しており、移動速度に依存しないことが明らかとなった。TLが低い程、すなわち高温液側(血液測)との温度差が大きいほど、VEは多くなる傾向が得られた。 2)膜蒸留実験(流量変化):今度は両流体の温度差を一定とし、QHを変化させたときのVEを求めた。その結果、流量を増大するにつれ、VEは増大したがやがて頭打ち傾向がみられた。 3)膜パラメータの推定:上記2種の膜蒸留実験の結果をもとに、熱収支、水分収支から、総括伝熱膜面積係数(UoA)を求めた。その結果、UoAの値はQHを増大するにつれある程度増加した後、ほぼ一定値に収束した。低QH領域では、温度境膜の影響が示唆された。 4)今後の課題:QH, QLを増大させると、熱交換器の能力限界により設定温度を維持できない事態が生じた。再循環実験系、熱交換器の見直し等の再検討を余儀なくされている。また、本システムに適した適正な蒸留膜の模索ならびに濃度、温度境膜を考慮した理論モデルを構築する必要がある。
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