現在の再生医療の進歩には目を見張るものがある。ところが、植え込み時にはうまくいっているにもかかわらず、遠隔期になって次第に萎縮したり、癌痕、石灰化してしまうことが多く観察されている。植え込んだ組織が萎縮し癌痕化する原因で最も多いのが「代謝がうまくいかない」、すなわちグラフトを栄養している血管が萎縮してしまうせいである。細胞の『配向性』という性質を利用すると細胞を好みの方向に遊走させることが可能であるが、この性質を利用し遠隔期にも血管を望む方向に伸展させ、維持することが可能であれば遠隔期に安定した状態を保つと考えた。本研究では血管の新生を"方向性"を持って行う、すなわちangiopolarityを血管にもたせる方法を考えた。材料の細胞親和性がもっとも重要であった。医用材料として手術に使用するコラーゲン製止血材においても細胞親和性において優劣が著明にあった。宿主の線維芽細胞はコラーゲンを産生するが、細胞のデザインとしてアテロコラーゲンの足場を作成し、それに新生血管が到達したときの血管の方向性を評価した。動物実験は家兎の観察窓rabbit ear chamberをリアルタイムに顕微鏡下に観察した。繊維状の足場を用いたときには血管芽(sprout)は繊維に張り付き、繊維を横断することができた。もぐさ状のコラーゲンでは新生血管は試料を避けて走行した。スポンジ状ではループ状に血管が静脈側から伸展した。新生血管を方向性を持って誘導するにはまず、細胞親和性が重要であることが示唆された。
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