研究概要 |
本年度の主な研究項目は2点である.一つは2音和音の協和度の脳神経生理学的過程の研究,他方は逆マスキングの脳磁図的研究である.それぞれについて簡単に述べる. 1)2音和音の協和度の知覚の脳神経生理学的過程の研究.2つの異なる周波数の音(純音)を聴くと,その周波数比によって協和度が異なって聞こえ,これが音楽における重要な要素である和声の基礎になっている.1960年代に,Plompらによって,心理物理学的研究が行われているので,その結果をふまえて,2音和音に対する誘発脳磁図を調べ,和音の種類と波形の関係を調べた.心理的協和度の比較的高い完全4度(P4)と完全5度(P5)の和音に対しては、心理的協和度の低い短2度(m2)、増4度(+4)の和音に比べ、左右の聴覚誘発反応において、N1mのピーク値が大きくなるという傾向が見られた。また、m2、+4の和音では、左右の聴覚誘発反応において、N1m後の150ms付近のピークの値と200〜400ms付近の値がP4とP5の場合に比べて大きくなるという傾向が見られた。 2)逆方向マスキングのMEGによる研究.強い音の後に弱い音を聞かせると,後の音が聞こえなくなる現象が(順方向)マスキングである.逆に弱い音の直後に強い音を聴かせると,先行の音が聞こえなくなる現象を逆方向マスキングと呼ぶが,あまり研究されていない.しかし音楽知覚にとってはどちらも重要であるので逆方向マスキング時のMEGを調べた.先行音と後続音の振幅比を1:100とし刺激間間隔(ISI)を変化させた場合,ISIの増大とともに後続音に対するN1m反応のピーク振幅が増大する傾向が見らた.また,ISIを一定にし,先行音の大きさを変化させた場合,N1m反応の大きさは信号音の大きさに対して非単調な変化を示した.潜時は単調に減少する傾向が見られた
|