研究概要 |
1.種々の複合脂質膜のin vitroでの制がん効果 脂質分子にアシル鎖の炭素数が2個ずつ異なるホスファチジルコリン(PC)を用いて、アポトーシス誘導について検討したところ、(1)アシル鎖長が12のPC(DLPC)の場合は、がん細胞に対してネクローシスを起こし、正常細胞に対しても強い細胞毒性を示した。(2)アシル鎖長が14のPC(DMPC)では、がん細胞にアポトーシスを誘導し、正常細胞に対して無毒性であった。(3)アシル鎖長が16のPC(DPPC)では、がん細胞増殖抑制効果を示さず、正常細胞に対して無毒性であった。 2.複合脂質膜のアポトーシス誘導メカニズム DMPC/10mol%C_<12>(EO)_<10>複合脂質膜は、腫瘍細胞に対して融合・蓄積後、デスレセプター(Fas)を活性化する経路とミトコンドリアを活性化する経路が存在し、FasからはFADDを介したカスペース-8の活性化及びBidの活性化、また、ミトコンドリアからはチトクロムcの放出とカスペース-9の活性化後、カスペース-3及びPARPが活性化して、アポトーシスを誘導することを明らかにした。 3.複合脂質膜のin vivoでの制がん効果 (1)リンパ腫瘍細胞を移植した担がんマウスに対する治療実験から、DMPC/5mol%C_<12>(EO)_n(n=21,23,25)複合脂質膜は、延命率が140%〜160%と高い延命効果が得られた。 (2)正常ラットを用いたDMPC/5mol%C_<12>(EO)_n(n=21,23,25)複合脂質膜の1週間反復投与毒性試験の体重、血球検査、血液生化学検査、各器官の剖検、臓器重量比などの結果から高い安全性が確認された。
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