研究概要 |
本研究は,循環式浴槽等の人工水環境におけるレジオネラ属菌のバイオフィルム形成機構を解明して,レジオネラ症の感染防止対策を提言することを目的としている. 平成15年度は,一様温度の静止培養液においてレジオネラ属菌が形成するバイオフィルムの形成能と形態が温度によってどのように影響を受けるかを明らかにした. 実験に使用したレジオネラは,Legionela pnumophila serogruoup1で標準株ATCC33152および臨床分離株として長崎1株(長崎80-045),沖縄2株(沖縄02-001,沖縄02-003)である.培地はBCYEα(Buffered Charcoal Yeast Extractα)の固形培地および液体培地を使用した.実験は,レジオネラを接種した固形培地と液体培地を一定温度に維持した培養室内で培養する.バイオフィルムの形成過程はビデオカメラで観察した. その結果以下の結論を得た. (1)BCYEα液体培地では35〜42.5℃の温度範囲で気液界面にバイオフィルムが形成された.液体培地表面では固形培地と同様に温度の影響を受け温度上昇とともに長桿菌が増殖する.しかし,液体培地では固形培地とは異なり気液界面に生成した100μm程度の長桿菌は固体壁上で網目状の堅固なフィルムを形成して固体壁に固着する. (2)液体培地にレジオネラを接種してから25hrs後にバイオフィルムが形成され70hrs後に固体壁から脱落をした.循環式浴槽等の人工水環境でこのようにバイオフィルムが固体壁から脱落するならばレジオネラは配管内の水流に乗ってシャワー等のエアロゾル発生源となる場所まで移動して人に感染する可能性を与えると考えられる.
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