研究概要 |
超音波断層装置を用いた医用診断は大きな成果をあげ,超音波診断装置は非常に普及してきた。しかし,断層画像を用いた診断には医師の経験や熟練を必要とする。本研究は,超音波診断装置の大きな特徴であるリアルタイム性を最大限利用し,これまで行ってきた定量診断のために超音波信号の統計的特長を生かした処理方法の検討結果と,生体組織の音響特性の検討結果とを総合し,臨床の現場で使用可能な肝臓病変の定量診断システムを開発することを目的としている。 本年度は,人肝臓病変の集中的な画像収集を最新のディジタル診断装置を用いて行い,さまざまな病変と画像信号との定量的な関係を明らかにした。まず,ディジタル超音波診断装置を中心に,超音波信号解析システムを構成し,臨床現場におけるさまざまな疾患の超音波RF信号の収集を行った。得られた信号の解析を行い,これまでの研究結果で提案している信号振幅の確率密度分布がレイリー分布からどの程度変化しているかを指標とする方法を検討した。特に,臨床現場では,これまでの実験室的な研究と比較して,データの収集条件が一定ではないので,このような点の検討を集中的に行い,臨床データを200例以上収集した。収集した超音波データの安定性について検討を加えるとともに,肝生検による線維化指標と肝臓からの超音波反射信号による定量指標を比較したところ,両者の間にはよい一致があり,超音波反射信号による定量評価の有効性が確認できた。さらに,臨床現場でも安定な結果が出るように,処理パラメータと評価結果の関係について検討した。これらの結果から,臨床現場で有用な定量診断システムの基本部分を開発することができた。
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