電子カルテシステムでは、経過記録、退院時サマリ、手術記録、検査レポートなどの記録が登録される。こうした情報には、臨床研究に意義のあるデータが含まれており、データを抽出する仕組みが望まれる。これらは、プリーテキストで記録されることが多いが、その揚合、データを二次利用することは難しい。そこで、多様性のある記録を構造化し、検索可能とする仕組みについて研究した。 動的テンプレートとよぶ階層構造を持つテンプレートを開発し、多様性のある記録を、項目と値の組を単位とした木構造の構造化データとする方法を開発した。これにより登録されるデータはXMLで表現される。 データ検索のためには、実運用で利用しているデータベースから検索目的のデータベース(データウェアハウス:DWH)にデータを移し、検索しやすい構造に変換することが望ましい。これまで、オーダエントリーシステムで登録されたデータのDWHへの移植を実現させてきた。この度、テンプレート登録した構造化データを、電子カルテデータベースからDWHに移す仕組みを開発した。 DWHではリレーショナルデータベースを利用し、一つの記述単位を1レコードに記録した。主なフィールドは、患者ID、登録日、登録者、項目と上位のパス、値、接尾語とした。ここで、項目および選択肢から選ばれた値にはコードが付けられている。上位パスによりある項目を一意に示すことができる。 このDWHに登録された血圧、脈拍、心音のテンプレート登録データから、僧帽弁閉鎖不全症または三尖弁閉鎖不全症の疑い患者、大動脈弁閉鎖不全症の疑い患者、重症高血圧患者、褐色細胞腫患者のスクリーニングのための検索を実行した。比較的簡単なSQL文で、393例のデータから、それぞれ28例、4例、34例、40例が検索された。 以上の方法により、電子カルテの中の自由文記載の記録が、高い精度で検索可能となることが示された。
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